本荘先生のダイヤモンド・オンラインの連載はいつも素晴らしくて、為になっています。
数ヶ月前、たまたま出張先のサンフランシスコでご一緒する機会があり、「いつも読んでます!結構反応したいときもあるんですけどねー」なんてことを話したら「わざと過激にやってるんだから、反応して議論盛り上げてよ」とおっしゃって頂いてました。
なかなかそうは言っても難しくて、これまでその機会がなかったんですが、先日の下記の記事について反応してみたいと思います。
ベンチャーキャピタリスト覆面座談会 起業家も投資家もレベルを上げねば未来はない|インキュベーションの虚と実|ダイヤモンド・オンライン.
座談会の主旨はタイトルの通りで「起業家も投資家もレベルを上げねば未来はない」という内容なんですが、いかんせん覆面座談会という企画で覆面になっちゃっているんで、なんともSPA!みたいで少し残念だな〜とw
で、リテラシーがそれなりにないと誤解も招くようなところもありそうだったので、そのあたりを「僕なりに」解釈した内容を補足してみたいと思います。

「顧問」をやってもらったらダメなの?

筆者 「顧問です」とか言って、起業家に誰かついてくることがあるけど、経験ない?
A もう、その瞬間にアウト(笑)。一生懸命プレゼンしてくるんだけど、「それ、だれが考えたんですか? 起業家のあなたが考えたプランですか?」って、疑って見ちゃう。顧問が経営するわけじゃないんだから。
B 「顧問です」を連れてくる起業家って、だいたい騙されている。騙される方も騙される方。でもびっくりするのは、そういう変な顧問がくっついている起業家に、絡みたい投資家がいるっていうこと。

ずいぶん極端な事例だなと思いますが、初めて起業する人が何も知らないのは当たり前だと思います。
そもそも何かを始めたいという熱意があれば色んなことを調べるはずで、今の世の中インターネットで色んなことが分かるようになっているので、顧問をやるよと言ってくれる人がどんな人であるかとかは調べるべきだとは思います。
が、そういう人に入り込まれたからと言って、一様にダメだと判断してしまうものでもないのかなと。
支援者である投資家が一番にやるべき事は可能性のある起業家に気付きのきっかけを与えることでもあるので、まずいなと思うような人が入っている場合でも出来るだけ話を聞いてあげることは非常に大事なことだと思います。
このパートの主旨として「嫌いな人には投資しない」ということで、ウマが合わない人とやっても上手くいかないというのは世の常ということでもあります。
よく分からない人を顧問にしている人とは合わないんだろうなくらいのことですね。

株価つり上げ族っているの?

筆者 スタートアップ・エコシステムのなかで、一緒に仕事をしたくない奴や、エコシステムを腐す、いなくなってほしい奴はいる?
C まず、「株価つり上げ族」。ウチの1.5~2倍の価格を出すベンチャーキャピタルがあるんだけど、これは結果的に起業家を苦しめるからやめてほしい。起業家や事業のためにならないから、いなくなってもらった方がいいんだが、実際増えている。
A 株価をつり上げるのは、起業家に対して投資家としての付加価値を提供できなくて、値段で勝負するしかないから。なりふりかまわず、「われわれだけで投資ラウンドを独占したい」とか、起業家に対して言う。それならお前だけでエグジット(株式上場や企業売却などによる、投資して取得した株式の現金化)してみろよ、と言いたい。
C 起業家も、そのときは甘い汁に見えるんだろうけど、後で困ることになるリスクは高い。

投資家からしたら投資したお金をエグジットさせるのがお仕事なので、当然のことを言っているわけですが、起業家からしてみると自分のあらゆる資本をつぎ込んでいる会社の血肉であるシェアは出来るだけ渡したくないもので、高いバリュエーションはシェアの希薄化を防ぐので、そうしたくなるのは当然です。
現状の東京市場のIPO時のマーケットキャップで考えると、あまりバリュエーションをあげてしまうとマルチプルが投資家として取れないという理屈なのでしょうが、本質的には投資家として事業価値を上げる努力をすべきなので、仮に高いバリュエーションで投資する投資家がいるとすれば、彼らはより高い価値に持っていく覚悟があるとも言えます。
また、資本政策においても想定しているような成長が出来なかった場合には、ダウンバリュエーションによる調達などを余儀なくされるケースもありますが、それも起業家自身が選択した結果と考えれば、つり上がった株価を受け入れることは起業家にとって自己責任の話なのだと思います。
投資家もダウンサイドリスクを一定程度カバーする内容を盛り込んだ優先株式を使うケースも増えているので、その分普通株式でやっている時よりも経済価値を認めて高めのバリュエーションになるということもあります。
もちろん、こういったことをきちんと起業家が理解していなければいけないという前提ですが。
※この後の発言で株価つり上げ族が誰なのかバッチリ書かれちゃってるというお茶目っぷりでしたが、そこはあえて割愛でw

ソーシャルやるのは悪いこと?

B それから、「ソーシャル内弁慶」ね。業界内の評価を上げることに躍起になっている起業家がいる。レガシー市場(法人など、個人の情報発信と縁が薄い顧客層)ターゲットなのに、フェイスブックにやたらご熱心とか。「こんな有名人とメシ食ってます!」とか「こんな投資家と知り合いになった」とか。フェイスブックのなかで大きく見せても、客はいないだろうに。
C 同じようなのが投資家にもいる。実績も成果もないのに、自慢話したり、投資先や起業家と飲んでるとか。フェイスブックやツイッターで頑張っても評価されないよ。
B そういう奴らがいると、エコシステムの品が落ちる。くだらないレベルの話で、どうでもいいんだけど、けっこう目につく。

まあ、確かに「誰々と知り合い」みたいなのはソーシャルであろうがなかろうが、文脈によっては良い印象にはならないですね。
一方で、誰かからの信頼を受けている人と仲良くなることは起業家としては非常に大事なことで、その人から様々な事業にメリットのある紹介を受ける可能性もあります。
そのことをソーシャルで発言することがどうなのか?ということですが、これも決して悪いことばかりでもなく、例えば採用などにはプラスの効果をもたらす可能性もあります。
スタートアップにジョインしてくれるのは特に最初の頃は友達の友達といったところのつながりが中心なわけで、いまどきソーシャルでの発信で自分自身をブランディングすることは非常に大事なことなわけで。
言わずもがな、誰かとご飯食べてることだけをソーシャルで発信してるのはココで言われているようにダメなんだとは思いますけど。
(僕の見えてるところでは誰かと飯食ってる柔らかい話から、めちゃくちゃ真面目な話まで同じ人がいろいろに発言してるので、そんな人あまりいないと感じます。)

アクセラレーターについて

ここの部分についてはシードアクセラレーターである僕が何を書いても反論に読めてしまうのでw
※なので、引用も控えます。
一つだけ言えるとしたら、シードアクセラレーターはおそらくconventionalなVCあるいは投資家とは違う形態というところかもしれません。
少なくとも多産多死を日本において活性化させる(シリコンバレーの自発的な部分をも補う)機能を前提に考えた場合、役割が違っているのではと。
たくさんの起業家が増えることで、何故投資家が困るのかはまったく理解出来ないのですが、少なくとも投資リスクを負っているのはあくまで先に投資しているシードアクセラレーターであり、その成否についての責任は投資していない投資家にはないと思いますし、困る理由は実はないのではないかなと思います。
(精精あるとしたら、なんとか調達したい起業家と会う時間くらいでしょうかね。調達できない起業家が増えることについては全体で吸収すべき話で確かにここにはシードアクセラレーターとして果たしきれていない部分は現実としてあるでしょう。このエントリでも書いたようにものすごい意識してますが。)

A モビーダのように、先祖がえりというか、スペースを提供するとともにスタッフを増強し、コミュニケーションを密にして活性化するよう、より手をかける方向に行こうとしているものも出てきている。これから変化もあるだろう。

触れていただきありがとうございます!
先祖返りというよりは積み重ねてきた結果として必要なことを始めているという感覚なんですよね。
単に投資してればいいということでもないので、当然にどういうやり方にしていくかというのはスタートアップと同様に事業と思って取り組んでいるので、スペースを持つというようなもとからあることをやるのであっても、僕らにとっては進化だったりしています。
(そういえばこちらにエントリ書いたんだった。)

投資家の人材不足?

筆者 業界内のいろいろな関係者に話を聞くと、投資家も人材不足だという指摘は多い。腕の立つベンチャーキャピタリストが少ないのはなぜなのか?
B おっしゃるとおり、投資家も起業家もレベルの高い人は増えていない。両方増えていかないと、産業の規模は相変わらず米国の何十分の一のまま。
A スタートアップの事業テーマがショボイのは、投資家側の責任でもある。今、世界で成功しているスタートアップは、どのようなトレンドに乗っているのか。それに対応してどのような会社をつくるのか。そういう絵が描ける人は数えるほどしかいない。
C それは、日本のスタートアップ・エコシステムにノウハウが積み重ねられていないからじゃないかと思う。数年前まで金融機関系のベンチャーキャピタルがメジャープレーヤーだった。彼らは短期間で、異動によって人が入れ替わるし、そうすると、ノウハウは積み重ねられない。
B 6~7年前までのベンチャーキャピタルは楽だった。年100件のIPO(株式上場)があって、投資金額が3~4倍になればエグジットしてもリターン(売却益)は出せた。だからばらまき戦略でもなんとかなった。
でもいまじゃ無理。早い段階で投資して、一定の手間をかけて成功確率を上げて、やっとリターンがつくれる。ベンチャーキャピタルの投資戦略に求められるものが変わった。

ベンチャーキャピタルという業態はお金を預かってそれを運用するファンドマネージャーという側面よりも、事業価値を如何に大きくしていくかを起業家と一緒に進めていく側面のほうが重要だと思います。
事業価値が大きくならなければIPOであれM&Aであれ、エグジット戦略は描けないわけで、必要な資質や経験というのは起業家のものとまったく変わらないはずです。
そういう意味では日本のベンチャーキャピタリストには起業したり、あるいは事業を実際にやっていたりした人材が圧倒的に不足しているという事実があります。
何でもシリコンバレーではと言うつもりはないのですが(笑)、投資家も実際に起業や事業を経験している人が圧倒的に多いので、日本もとにかく起業家の数を増やすことで経験豊富(ポイントは成功したということでもないので、あえて経験豊富なとしてます。失敗も大事な経験です。)な起業家を増やし、その中から投資家に転じるというキャリアパスを持つ人が出てくると良いのではないかと思っています。


ここから先の話はタイトルのとおりでレベル上げようぜの話だったので、特になかったので割愛。
(個人的な印象ですが、Bの人はとてもいい人なんでしょうね。この後の部分でも10億円のバリューでどうのこうの言ってくる起業家がいて困るとおっしゃっていますが、恐らくそういう人には投資されないでしょうから、実際に迷惑なことなんてないと思うんですが、しきりにこう言うのを減らさないとと発言されている。)

結論として「起業家も投資家もレベルを上げねば未来はない」というところはまったくその通りだと思っています。
微力ながら起業家育成に関しては地道に毎週SCHOOLやったりしていますが、実は投資家のレベルアップについても少しずつ活動を開始しています。
先日、”Convertible Equity勉強会”というイベントを開催し、その後facebookのグループで”投資家とCFOのための勉強会”を立ち上げました。
日本ベンチャーキャピタル協会の会長でもあるITV安達社長にもサポート頂いていて、これからはもう少し活動を活性化させたいなと思っています。
まずは登録メンバーを厳選しながら増やさないとかな(笑)