最近、シリコンバレーの創業期ファイナンスはほとんど全てでConvertible Notesが使われているようです。

Y-CombinatorのPaul Grahamも”Convertible Notesが勝利した“といったtweetをしたりしています。

Convertible Notesの仕組み自体は決して目新しいものではなく、私も三井物産にいたときにConvertible Notesでやっていた案件があったことを記憶しています。

では、なぜ今、シリコンバレーでもConvertible Notesが使われるようになったのか?について、その理由を考えてみたいと思います。

そもそもConvertible Notesとは?

正式にはConvertible Promissory Notesで、訳すとすれば「株式に転換できる約束手形」ですね。

日本で同じ仕組を作ろうとすると「新株予約権付転換社債」と表現されるものです。

社債と表現されることからも分かる通り、お金の出し手から見ると「資本(Equity)」の形ではなく「貸付(Debt)」の形で資金提供することになるもので、平たく言うとお金を出してもらうほうからすると「借金」ということになります。

但し、満期日までに一定の条件を満たすと(ほぼ自動的に)株式に転換されるということが決まっているのが特徴です。

一定の条件というのはQualified Financingという形で定義されていて、通常は「次回の増資ラウンドで〇〇ドル以上集める」といったものになっています。

何故このような条件になるのかというのは、仮に小さい金額で増資できたとしても出来ることは限られてしまい、一定以上の金額を集めて事業を進めないと、会社としてのステージが上がっていかないと考えるためで、条件をクリアしないままであれば返済義務のある貸付のままになりますし、これがいい意味でのプレッシャーとして起業家が必要金額を集める努力をすることにもなります。

また、株式に転換されるときの株式と株価については、次回ラウンド時点で発行される種類株式(こちらについてはまたの機会に詳しく書きたいと思いますが、シリコンバレーの投資では種類株式(prefered stock=優先株式)が使われるのが普通です)で、その株価に対していくつかの優先条項が付いた価格になります。

何故優先条項をつけるかについても、言わずもがなかもしれませんが、一応書いておくと、スタートアップへの投資では早いタイミングでお金を提供すればするほど、リスクの高い時期にお金を出していることになるので、そのリスクプレミアム分のディスカウントということになります。
(リスクを取った分、リターンも大きいという設定になっていないと、そもそもリスクを取る人がいないですよね?というのがプロの投資家の考え方です。)

優先条項についても、ほぼ以下の2種類が付いていて、いずれか価格の安い方を適用するのが一般的のようです。

  1. Discount Rate:次回株価に対して割引率を設定するもので、20%とかが通常のようです。
  2. Valuation Cap:次回ラウンド終了後に潜在株も含めてのシェアでConvertible Notes総額分を〇〇%とするというものです。例えば300万のConvertible Notesで5000万円のValuation Capとは次回増資完了後潜在株込みのシェアで6%になるということを意味します。

高いValuationで調達すればするほど、Convertible Notesが転換された後のシェアは下がっていくことになるのですが、2.のValuation Capの考え方で、スタートアップ直後のリスクを取ってくれた投資家に対して一定以上のプリファレンスをつけることが可能になっています。

起業家からすると、Valuation Cap以上のValuationで次回ラウンドを成立させないと希薄化が大きくなるので、高いValuationになる=事業の進捗が認められた形でののファイナンスになるということなので、いい意味でのモチベーションにもなると言えます。

かなり大雑把な説明ですが、Convertible Notesの仕組みと、どういう条件が一般的かについては上記したようなものになると思います。

Convertible Notesを使うメリット

一つ目のメリットには上述した中にもある通り、起業家に対して良い意味でのプレッシャー、モチベーションを条件の設定によって与えることが出来るというものです。

シリコンバレーでは元々マイルストーン投資という考え方があり、投資した金額をどういったことに使って、どういう成果を達成するか、というマイルストーンを決めて投資していくもので、Qualified FinancingやValuation Capというのは、そういったマイルストーンを達成するのに必要な金額であり、達成した成果によって評価されるべきValuationであるということです。

二つ目のメリットとしては、Valuationを次回ラウンドまで決めずに置くということができるということです。

必要な資金を必要なタイミングで調達していくわけですが、資本政策が逆戻り出来ないという性質上、初期のタイミングでのValuationによって創業者の持分は大きく変わることになります。
(Googleや最近IPOしている各社が議決権で差が出る種類株の仕組みを使っていますが、それも十分に会社が儲かっている前提で経営者に権限を与えることが合理的である株主が認めていることであり、成長期のスタートアップに同様の仕組みを持ち込めるかというと難しいわけなので、実際の持分比率が重要になります。)

例えば、立ち上げ直後で500万円出資してもらう場合、将来的な希薄化を出来るだけ先延ばしするために、この500万円に対して5%分のシェアを渡すとするとValuationは1億円ということになります。

この場合、起業家のシェアの希薄化のスピードは緩めることは出来るのですが、次回の調達時にValuation1億円以下での調達しか出来ないと、500万円を出した投資家はいきなり減損状態になってしまうことになりますし、事業の初期段階でリスクを取ったにも関わらず次回ファイナンスの投資家よりリターンが少なくなってしまいます。

つまり1億円以下のValuationでの調達は事実上困難で、これは起業家にとって将来的なファイナンスの選択肢を一つ狭めているということになります。

逆に立ち上げ直後であれば3000万円というValuationが低すぎるということでもないのですが、その場合だと500万円に対して15%近くのシェアを放出してしまうことになって、結局この場合も起業家の希薄化を将来的に加速させることになり、これもまた将来的なファイナンスの選択肢を狭めることになります。

Convertible Notesを使うことにより、次回にEquity Financeを行なうまではValuationが決まらないことになりますので、次回投資家のValuationでの調達が可能で、上述したような条件で初期投資家にもプリファレンスを与えることが出来るため、起業家にとってのファイナンスの選択肢を増やすことが出来るのです。

このファイナンスの選択肢を狭めないやり方がシリコンバレーではスタンダードになっているということだと思います。

非常に合理的で起業家・投資家双方にメリットあるやり方なので、日本でも今後普及していく(させたい)と思っています。


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