3回に分けたシリーズについて、「シリーズAとかBとかってそういう意味だったんですね。」とか「優先株について非常に分かりやすかった」など総じてポジティブな意見をお会いする方から頂いてまして、非常にありがたい限りです。

シリコンバレーのファイナンスが優先株が一般的である理由(その1)
シリコンバレーのファイナンスが優先株が一般的である理由(その2)
シリコンバレーのファイナンスが優先株が一般的である理由(その3)

実際に優先株で調達を進めていくにあたって気をつけるべきポイントを考えてみたいと思います。

マイルストーン投資の考え方

シリコンバレーで一般的な考え方にマイルストーン投資というものがあります。

ざっくり言うと、必要な資金を全て集めてしまうのではなく、設定したマイルストーン達成に必要な金額だけを集めて進めていくというものです。

スタートアップが取り組む事業は不確実性が高いので、リスクマネジメントとして段階的に投資を行なうという考え方ですね。

時間の経過とともに事業が成長していけば、事業価値も高まりValuationも上がっていくことになります。

後のステージで入れる投資家は、高いValuationを受け入れる代わりにそれ以前の投資家より有利な条件での優先株で投資するというのが、一般的です。
(もちろんその企業の成長の仕方次第で、色々変わるのですが。)

先に入っている投資家は低いValuationで投資をしているので、IPOのときはリターンが大きくなります。

Valuationを高めながら段階的な調達とすることで、起業家には希薄化のスピードを抑えることが出来ることになるメリットがあります。

気をつけるべきポイント

段階的に調達をするので、その時点における事業の成長の度合いによって、Valuation交渉をすることになります。

順調に進んでいれば、前回のラウンドと同条件で価格を上げて、調達することが可能で、そうでなければ色々有利な条件を付けることになるのです。

利益が出ていない時点でスタートアップの企業価値を評価するのは、基本的にどのようなやり方であってもあてにならないと思います。

一応はそういった方法で計算可能であるように事業計画等で説明するとしても、実体としてはマイルストーン達成に必要な資金額を決めて、放出するシェアからValuationを決めるというのが本当のところだったりもします。

優先株のPreferenceはまさにこのValuationを維持するための交渉材料としても使うことが可能であり、起業家はPreferenceを受け入れることで、投資家はValuationを受け入れることで、双方にとってfairなdealとなるというのがシリコンバレー流なのだと思います。

ステージが進むときにはValuationを高めていかなければならないので、ステージの早い段階であまりPreferenceを付けすぎていると後々切るカードが減っていくのだということを起業家は認識して、Preferenceを上手く使って交渉するのが気をつけるポイントになります。

具体的なPreferenceについて

優先株において経済的価値があると考えられる条件が、Valuation交渉においても中心になってきます。

主として、優先残余財産分配権、優先配当権、希薄化防止条項が条件交渉に使われます。

もちろんこれら以外にも経営権に関わる条件も定められるのですが、経済的価値に関わるところが結果的にはValuation交渉に重要となると考えられています。

それぞれ、どのように設定するのかの解説してみたいと思います。
※実際に設定する場合は日米における法制度の違いなどもあり、ここで書いていることがそのまま設定できるとは限らないので、必ず弁護士の先生とご相談していただくことをおすすめします。

【優先残余財産分配権】
日米法制度の違いがあり、同じような仕組みを作るにはかなり手間がかかるのですが、米国で使われるLiquidation Preferenceの前提でどのような条件が重要になるかです。

解散時にのみでなくM&AのときもDeemed Liquidationとして適用されるように設定しておく必要があります。

こちらには2つの条件があります。

  1. 優先分配権
  2. 1株あたりにいくらまで優先して分配していくかを定めるもので、取得価額に対して1倍や2倍といった形で決めることになります。
    もちろん、1倍以下の設定も可能ですが、投資家の立場からすると、まずは元本回収を優先して分配受けることで利益を確保したいということになるので、1倍以上の設定で交渉することになるのが通常です。

  3. 参加型/非参加型
  4. 上記の優先分配が完了した後に、まだ分配可能な資産があった場合にその分配に参加できるか権利があるかどうかというものです。
    例えば、優先配当を累積型としておき、優先分配を2倍として、こちらを非参加型とするというような形で、投資家に対してM&Aイベント時に確実に2倍以上のリターンになるというようにといったことも設計できます。
    参加に関しても全部参加ではなく、例えば残ったうちの20%までは参加可能だけれども、残りは出来ないというようなことも可能です。

こちらの条件をきめ細かく設計することで将来的なM&Aの可能性を検討しやすくすることができるので、非常に重要であり、またここの条件設定次第でValuationの交渉もかなり影響されることになります。

簡単な事例で2つのケースで考えてみます。
まず前提として起業家が1000万円(株価1万円×1000株)で創業、その後2億円(株価20万円)の時価評価で1億円(500株)の調達を行ない、以下の分配権の設定していたとします。
①残余財産分配は2倍、非参加型
②残余財産分配は1倍、50%までの一部参加型
③残余財産分配は1倍、全部参加型

<ケース1>
とある企業から10億円の買収提案を受けて検討することになった。

① 2倍の優先分配となるので2億円
② まずは1倍の優先分配で1億円。残り9億円の50%である4.5億円に対して持分比率1/3の分配を受けるので1.5億円。合計2.5億円
③ まずは1倍の優先分配で1億円。残り9億円に対して持分比率1/3の分配を受けるので3億円。合計4億円

こちらの場合は増資時よりも買収提案価格も高いため、問題なく受け入れが決まることになることが予想されますが、設定している条件によって投資家のリターンがだいぶ変わることになります。

<ケース2>
とある企業から2.5億円の買収提案を受けて検討することになった。

① 2倍の優先分配となるので2億円
② まずは1倍の優先分配で1億円。残り1.5億円の50%である0.75億円に対して持分比率1/3の分配を受けるので0.25億円。合計1.25億円
③ まずは1倍の優先分配で1億円。残り1.5億円に対して持分比率1/3の分配を受けるので0.5億円。合計1.5億円

ケース1と比べると①が一番投資家のリターンが大きい状態になっています。

このように同じ条件でも分配が変わってくることも頭に入れて、条件を投資家と交渉することがポイントです。

ここまでで随分と長くなってしまったので、一旦ここで終わりにして続きは明日書くことにします。

優先株について日米双方に通じて詳しくまとめられている増島先生のこちらも参考にしてください。



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