一昨日のエントリーの続きです。

Valuationの交渉に使えるのは経済的な価値があると認められるところが中心になるので、残りの2つについてです。

【優先配当権】
まずは配当というのは配当可能な利益がない限り出来ないものですが、配当が出来る場合に優先して配当を受け取ることを定めるものです。

以下の3つの条件を投資家と交渉することになるのが一般的です。

  1. 年間配当率
  2. 優先株式の取得価額に対して配当率を設定するものです。
    例えば5%や10%などと設定し、取得価額が1万円であれば500円や1000円を1株あたりの配当として受け取ることになります。
    次の累積型かどうかによって、かなり意味合いが変わります。

  3. 累積型/非累積型
  4. 累積型というのは配当しない場合は配当可能利益が出るまで累積していくというふうに定めるものです。
    累積型に設定すると投資家は例えば10%という利回り設定にすれば、それまでが赤字であっても累損を解消して10年目に配当可能な利益があれば、その時点で元本回収が出来るというような考え方もできます。

  5. 参加型/非参加型
  6. 参加型というのは、優先して配当した後の配当可能な利益が残っていたときに普通株も含めて配当するとしたときにその配当を受け取る権利があるかどうかというものです。

いずれにせよ、スタートアップ企業が配当するという状況は極めて稀ですので、あまり重要視されないですが、強いて言うならば起業家が変な配当をしてしまうようなことがないよう牽制の意味合いのほうが強いのかもしれません。

簡単な事例で説明すると…
<ケース>
起業家が1000万円(株価1万円×1000株)で創業、その後2億円(株価20万円)の時価評価で1億円(500株)の調達を行った。
調達から3年後に累損を解消、配当が可能となり、利益から6000万円を配当することとした。
①年間配当率10%、非累積型、非参加型
②年間配当率10%、累積型、非参加型
③年間配当率10%、累積型、参加型
この場合、起業家と投資家でそれぞれの受け取る配当は以下のようになります。

① 優先配当が1株あたり20万円×10%=2万円あり、これに500株をかけた1000万円が受取配当になります。
② ①の受取配当が3年間の累積になるので、1000万円×3の3000万円が受取配当になります。
③ ②に加えて、配当原資の残りを株式持分に応じて受け取れることになるので6000万円-3000万円=3000万円の1/3である1000万円を加えて4000万円が受取配当になります。

まあ、あんまりこんなケースはなさそうな気がしますけど、理解のために簡単な事例を挙げてみました。

【希薄化防止条項】
前回増資時のValuationよりもValuationを下げて調達せざるをえないダウンラウンドを余儀なくされる可能性もあります。

このようなときには既存投資家の持分は大きく希薄化されることになるため、これを防止する条項として以下の2つがあります。

  1. ラチェット条項
  2. こちらは投資家をかなり保護するもので、前回増資時の株価からダウンラウンドの株価に置き換えて調整するという条項になります。
    優先株は普通株に転換するための転換価格が決められており(通常は取得価額と同じ)、この転換価格をダウンラウンドの株価にするということになります。
    これだけ書いてもよく分からないので例を挙げると、株価1万円で1万株出資していたとして、ダウンラウンドで株価が5000円になったときは、
    1万円×1万株÷5000円=2万株
    というように持株数が調整されることになります。

  3. 加重平均方式
  4. こちらがより一般的に採用される方式で、転換価格を加重平均で調整します。
    計算式を表示したほうが分かりやすいと思いますので、以下になります。
    weighted average

事例をベースに見てみましょう。
<ケース>
起業家が1000万円(株価200円×50000株)で創業、その後シリーズAで1.5億円(株価1万円×15000株)、シリーズBで1.8億円(株価1.2万円×15000株)を調達していた。
増資前の資本構成はこのようになります。
anti_dilution1
ここでダウンラウンドで3.2億円(株価8000円×40000株)を調達したとします。
(色々事例のために数字を適当に入れてたけどラチェット条項はすごいな。。。下手すると元のシェアより増える。。。)
それぞれの場合の資本構成は以下の通りになります。

①希薄化防止条項なし
anti_dilution2

②加重平均方式
anti_dilution3

③ラチェット方式
anti_dilution4

希薄化防止条項がどのようにシェアに影響を与えるのかの説明のために事例を作ってみました。

基本的に会社がValuationを下げて調達せざるを得ないときに、既存投資家が保護されないというのでは投資を呼び込みにくくなるので、いずれかの希薄化防止条項を入れることになると思いますが、まずは加重平均方式(潜在株を含めるかどうかも実はポイント)がベースになると思います。

次回はGovernanceに関わる条件について書こうと思います。

優先株について日米双方に通じて詳しくまとめられている増島先生のこちらも参考にしてください。



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