そもそも売上が立っていない段階ではスタートアップの事業価値(Valuation)はどんなやり方でも正しく評価することは難しいものです。
まあ、上場している企業でも理論上の価値とMarket Valueが異なるなんてこともざらにあるので、売り手と買い手が合意している金額が正しいのだと言い切ってしまうこともできます。
起業家の人は大抵資金調達というものをほとんど経験したことがなく、投資家との交渉も初めてと言ったケースも多いでしょうから、投資家がどういう考え方でValuationを判断しているかが分かっていないように思います。

必ずしも、これだけで決まるというわけではないですが、投資家に説明するときに抑えておくべきポイントを考えてみたいと思います。

自分のいるステージはどこか?

SeedやEarlyと言っても、結構ステージが全然違ったりしてるのを一緒くたにしてしまいがちなので、こんな感じで場合分けすると分かりやすいかも。

  1. Seed
  2. まだアイデア段階でサービスもまだ出来ていない状態で会社自体もこれからという段階。あるいはクローズドベータ(オープンベータ)で動いているサービスはあるがとにかく始めただけの段階。
    このステージは知人・親戚やエンジェル投資家、シードアクセラレーターからの調達を狙うべきです。
    アイデアだけの段階では普通のVCは出資しないのが通常です。
    出資するとしても共同創業という形でがっつりシェアも抑えるようなやり方か、経験のある(連続)起業家の場合になるでしょう。
    とにかく、サービスを作り上げることと以下に挙げるEarlyの段階をクリアできるような仮説検証(フォーミュラ探しと言ってもよい)をやり遂げるに最低必要な金額を調達する。
    外部投資家をこの段階から入れるというのは急成長を目指して将来的に株を放出して資金調達を前提にするという事を意味するので、どういう事業をやるのか?によっては外部投資家を入れないほうが良いケースもあるので、色んな人に相談するのもよいでしょう。
    シードアクセラレーターも自分たちが入れるからには将来的には外部投資家が入ることを前提にしているので、アイデアを聞けばどちらが良いのかのアドバイスをきちんとしてくれるはずです。
    通常、このステージで調達する金額は一般的には数百万円〜20百万円くらいまでだと思います。

  3. EarlyのEarly
  4. 既にサービスを始めていてユーザーも付いてきているが、具体的なビジネスモデルやユーザー数拡大の施策などはまだ検証できていない段階。
    このステージであれば検討可能なVCも出てきます。
    サービスも始まっているので、現状のユーザーの動きなどから仮説を立てるのが重要なステージです。
    想定しているビジネスが本当に出来るかどうかを小さくてもいいから実現させる、あるいはユーザー数を拡大していくために具体的な施策、こういうことをやればこういうフォーミュラでユーザーが伸びていく、といったことを確認していくために必要な資金を調達するイメージで、規模としては50百万円くらいまでになると思います。
    この次のステージの投資で黒字化させるために必要なことは何なのか?を明らかにすることが、このステージにおける最大の目標になります。

  5. EarlyのLater
  6. 何をやればユーザー数が増える、売上が上がるといったことが分かっており、お金をかけて一気に成長をさせようという段階。
    リードインベスターとしてこの後のGrowth、Expansionのステージもリードインベスターとして支えてくれるVCを見つける必要があります。
    もう既に何をやればどうなるの仮説も出来ているので、後は資金を得てユーザーを拡大してキャッシュ・フローを作り出し、単月黒字化・CF黒字化に向けて走っていくために必要な資金を調達するイメージで、規模としては通常は億単位になります。

以前、こちらのエントリでも書いたのですが、Webやモバイルのサービスをスタートアップするには圧倒的にお金がかからなくなったので、SeedやEarlyといったステージも細かく分解して小さく始めることが可能になり、このようなステージ分けをしてどこにいるのかを認識していくことが大事になってる気がします。

ちなみにリードインベスターに関連して、投資家についても誰とやるか?というのも非常に大事です。
海外の一流VCはきちんとキャピタリスト個人を紹介するページもあって顔が見えてるのが普通なんですが、日本のVCだとそういうページを用意してないところ多いですね。
まあ、きちんと出してないところよりは出してるところのほうがいいと思います。
キャピタリストの人のポートフォリオを見ればその人の好みも分かるので、自分のプランが気に入られそうな人を見つけるのにも役立ちますし。

説得力のある事業計画

Valuationと調達金額の関係について、言わずもがなな気がしますが、簡単におさらいをしておきましょう。
Valuationを表現するときにPre MoneyやPost Moneyといった表現を聞いたことがあると思います。
これは投資実行前のValuationをPre Money、投資実行後のValuationをPost Moneyと言うのですが、次のような関係が成り立っています。

Pre Money Valuation + 調達金額 = Post Money Valuation

投資家のシェアは調達金額をPost Moneyで割ったものになります。
裏を返すと、「調達したい金額」を「放出しても良いと考えるシェア」で割るとPost Moneyになるということです。
(単純な話で、ここから調達金額を引くとPre Moneyになりますね。)
Valuationはこの計算式から決めてしまっても、実はいいのです。
大事なのはその「調達したい金額」で何を実現するのか?ということを説明する事業計画で、これに説得力があれば投資家は納得するのです。
以前、こちらのエントリでも書いたのですが、要は事業計画とは何を具体的にやるのか?というアクションアイテムを明確にして、それと数字とを紐付けておくというように言い換えることができます。
アクションに応じて色んなことが分かってきたりして、それによって将来の選択肢、つまりやることが変わるのは当り前で、それによって必要資金が変わってくるのであれば、当然にその結果が出るところまでをマイルストーンとして、必要資金を入れていきましょうと考えることになります。
(マイルストーンを設定して、その都度投資していくことをマイルストーン投資と言い、このマイルストーンを設定して各シリーズのファイナンスをリードするのがリードインベスターです。)
最近資金調達を完了したOh My Glassesのチームがインタビュー記事

サービスをリリースしてしまってからでは、期待感を煽ることは難しい。だからといって、リリースから時間が経ちすぎてしまうと成長が鈍化してしまいます。そのため、前回の調達はサービスのリリース前に実施しました。

前回の調達以降、「インターネットでメガネは売れるのか」という仮説をずっと検証してきました。仮説も検証でき、数字もある程度出せたので、検証できた数字をもって、今回VCのところを回って調達を行いました。資金が足りなくなったから調達した、というよりは、仮説が検証できたので、次のセッションのための資金を集めることにしました。

と語っていて、まさに仮説検証の結果を持って資金調達に成功したという良い事例です。

上で説明したステージですが、実際に事業計画を書いてみると、ステージごとに確度が違っていることが理解できると思います。
億単位のお金を集めようと思えば、当然に事業計画について「こうやれば、こうなる」というロジックがある程度出来上がっていないとダメなわけです。
(もちろん、その説得度がValuationを担保しているわけです。)
かつてはSeedの段階でも数千万円からかけてでないと始められなかったのが、今は数百万円でこのステージを実現でき、全体的にお金をかけずに立ち上げることも可能になっているので、過去に経験のある起業家の場合は当初からそれなりのValuationで調達金額も多めで始めることも可能になっていると思います。

我々がやっているシードアクセラレーターの仕事は、まだまともに事業計画も書けない段階から支援を始めて、説得力のある事業計画を作れるように手助けしてあげるのが、実はその大部分を占めているなと思います。
実際に我々が支援したいなと思うのは、アイデアを実現したいという気持ちが強い起業家で、そのような起業家はどんな形であれ、自分の作りたいもののプロトタイプ(紙で説明するものだって構わない)を作ってきて我々のところにやってきます。
ビジネスモデルなどはやってみなくては分からないところがあるし、進めていく中で我々も入って決めていくことに結果的になるので、実は我々のところに来たときにはあまり事業計画の形になっていなくても構わなかったりします。
(但し、我々の提供する資金を何に使うつもりなのか?をきちんと頭の中を整理してもらう意味で、事業計画を作ってというお願いはします。)

少し話がそれましたが、調達したい金額を希望するValuationで調達するためには、何をやるかを明確にして説得力を持った事業計画を作る必要がありますよ、というお話でした。
(偉そうに書いてますけど、僕も色々失敗した経験から、こういうような整理になったんですけどね(笑))



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