最近、起業詐欺みたいな話を聞くこともだいぶ減りましたが、若い人が会社を始めるときによく分からないままに歪な資本構成にされていたりなどということもしばしば見かけます。
これに限らず、例えば共同創業者との持分をどのように考えるべきか、あるいは従業員や外部協力者、最初の出資者などにはどれくらい与えるのが適切なのか?といったことはよく相談を受けます。
必ずしも正解はないと思うのですが、「さすがにこりゃないわ〜!」っていう状況にならないようにいくつかのポイントに付いて整理して考えてみたいと思います。

基本的な考え方

当り前の話ですが、起業家こそがプロダクトやサービスの根幹を思いついた人であり、実際にその事業化に一番コミットする人になります。
事業を起ち上げるところで一番の資本は起業家の体と頭と時間のはずなんですよね。
なので、本来起業家なかりせば、事業は立ち上がらず成功することもないはずなので、一番貴重な資本は起業家自身です。
株式のことをShareと英語では表現しますが、まさに起業家自身の血肉をShareすることになると資本政策では考えておくべきです。

アイデアを実現するには様々なリソースが必要になるわけですが、「お金や会社の設立・システムの開発などは心配するな。お前はそのアイデアを実現することに集中しろ。」と言う甘言に乗って、代表をやってるけど持分全くない、なんてことにくれぐれもならないように気をつけてください。
あなたがいなければ実現しないのですから、お金を出してくれる人にも自信を持って対しましょう。

とはいえ、起業家自信が色々なことにアンテナを張っていないで、成功するわけもないので、現代のように色んな情報を入手出来る状況でそんなことになってしまうのであれば、それはそれで仕方のないことでもあるのですが。

共同創業者

共同創業者との持分の決め方は大変難しい問題です。
これも正解はないと思うのですが、共同代表という形態でも取らない限り、代表をやる人に70%以上で寄せるのがいいと思います。

共同創業者との間でよくありがちなのが、途中で喧嘩別れしてしまったときに半々ずつ持っていて、株式の受け渡しが上手く行かないといったことがあります。
(移動しなければいけないのは、もちろん会社の重要事項を決められるだけの比率を持てないという理由以外にも、その後成功したとして、実際に成功に貢献していない人が働かずして利得を得てしまうことになるという問題もあります。)
ある程度事業がうまく行ってると事業価値も上がっているということになるので、直近取引された株価で買取しなければならないとしたときに買える金額じゃなかったり、あるいは別の価格の決め方をしたとしてもその場合は安く買ったということでの税務リスクが発生したりします。

まあ、喧嘩しなきゃいいんですが、人間関係先のことなんて分からないわけですから、この時に移動しなければならないShareが多いほうが面倒になるわけです。
共同で代表をやるくらいであれば同じくらいのShareでいいと思うのですが、そうでなければ持分は代表に寄せておき、給料がたくさん出せるようになったときにそっちで報いるといったことにするほうが望ましいのではないかと思います。

あくまで、これも正解はないので、お互いの役割分担によって決めるのがいいのですが、一つのガイドラインとして捉えてもらうと良いです。

従業員・外部協力者

創業当初の仲間になってくれる従業員や、外部協力者にもなかなかその働きに見合うような給料を払うのが難しいのが立ち上げ初期だったりします。
もちろん、お金だけではなく起業家がやりたいことを一緒に実現したいという想いがあるからこそ、Joinしてくれたり手伝ってくれたりするわけですが、やっぱり成功の果実をこういった人たちにも得られるような仕組みを考える必要があります。
シリコンバレーではSweat Equityという表現をしたりしますが、働いた分をストックオプションを支払うというやり方をしています。

従業員の場合にはEmployee Stock Option Poolというのを最初から設定しておいて、投資家とのコミュニケーションもこの枠を念頭に入れたFully Diluted BasisでShare(すべての潜在株を含めた現時点から希薄化した時点での持分比率)の話がされるくらいに一般的なやり方です。
日本の場合は新株予約権を具体的に登記する必要があり、また付与しないものについては1年で消却してしまうという点で、このようなPoolをつくりにくいという制度上の問題はあるのですが、将来的に入ってくる外部投資家と握ってきちんと枠を設定しておくのが良いでしょう。
一人当たりにどれくらい割り当てるのかというのは、設計がなかなか難しいのですが、税務・会計・法務に関わるので専門家に相談しながら決めるのが良いと思います。

外部協力者にストックオプションで支払うということもシリコンバレーではよくある話で、例えば最初のシステム開発を手伝ってくれたエンジニアや弁護士などの専門家に対して、報酬をお金の代わりにストックオプションで支払うというパターンです。
こういうときにあまり多くを渡すのはよくないですが、一つの手段として使えることを頭に入れておいて良いでしょう。

個人投資家・アクセラレーター

いわゆるエンジェルと呼ばれる個人投資家やシードアクセラレーターという人たちが創業初期、VCからの資金調達が可能になるまでの間の資金の出し手となってくれることが大抵のケースであると思います。

エンジェルというのは元々お金だけを出して、あれこれ事業に対して口を出すことはせずPassiveな投資家をまるで天使!ということでAngel Investorと呼んだのが始まりです。
ここ数年でネット系サービスを起ち上げるのに必要な資金が少なくて済むようになり、小口で投資活動をたくさんすると同時に積極的に自らの経験を起業家に提供していくActiveなエンジェル投資家が現れました。
そういった投資家はSuper Angelなどと呼ばれていましたが、システマティックにプログラムを作って支援するようになった人たちがアクセラレーターというのを名乗り始めています。
創業当初、特に若い人が始めた場合は人脈もないですし、こうしたエンジェルやアクセラレーターの人たちが事業に対してしてくれるアドバイスやビジネス上のつながりを紹介してもらったりなど非常に有用なことが多いです。

ですが、こうした人達が時に起業家の人たちを搾取するようなShareを持っていたりするケースを見聞きすると非常に残念な気持ちになります。
冒頭の「基本的な考え方」でも書きましたが、一番の貴重な資本は起業家自身なわけですから、自分のShareを維持することにはこだわって欲しいですし、投資する立場の人達も結局は投資した起業家がやる気を失ってしまっては元も子もないわけですからアコギなことするのはやめて欲しいなと。
(自分の時間を100%投入するのでないということをもっと投資家は意識すべきです。それをやっている起業家との違いを認識すればそんなことにならないと思うんだけどなあw)
若干ここからはMOVIDAで自らアクセラレーターとして活動しているので、もちろんポジショントークが入ってしまうのですが(笑)、MOVIDAでとっているやり方を説明することにします。

MOVIDAでは以前こちらの記事でも紹介したConvertible Noteの日本版の新株予約権付転換社債を利用しています。
紹介記事を読んでもらえれば、何故この仕組を使っているかは理解できると思うのですが、簡単に言うと起業家のShareの希薄化スピードを遅くすることが出来るというのと、最初のリスクを取る投資家のダウンサイドリスクをミニマイズすることができるからです。
まだ何もないところにお金を入れるわけで2000万円のPre-Valueで500万円入れてしまったらいきなり20%とってしまうわけですし、逆に5%分とすると1億円のPost-Valueになってしまい次回ファイナンスでこれ以上で調達できなければいきなり減損するだけでなく、リスクを先に取ったのに次の投資家よりリターンが少ないという変なことがおこってしまうといったことを回避できる仕組みなわけです。

具体的な条件として金額は一律500万円で転換価格に関しては20%のDiscountと10%分ShareとなるValuation Capで定まる価格の安いほうを条件としています。
MOVIDAの場合は元々スタートアップエコシステムをシリコンバレーに比するものとして創り上げるということでシードアクセラレーター事業を開始しており、そのために数を沢山生み出すことを目的としていてMOVIDA SCHOOLなど数が質を作り出す仕組みを運営しています。
この運営資金を賄うために後から回収するモデルで投資事業を開始していて、そのためにSCHOOLに通ってきている優秀なスタートアップに対して創業ファイナンスのScholarship(Convertible Note)として500万円提供します。
数多くのスタートアップに対して同様のことを行っていくことを目的としているので各社毎に必要資金を見積もってということはあえてしていません。
この500万円をアイデア実現からローンチして一定のユーザー獲得出来るところまでの資金として考えていいて、500万円あれば、若者3人が毎月20万円ずつの生活費としてやっても半年で360万円で、他の経費を考えても6ヶ月分にはなるだろうし、この期間で走りぬけて欲しいと。

また次回ファイナンスにおける転換価格の条件ですが、低いValuationになったときは我々の持分が増えますが、一定以上に評価されたときには我々のShareは10%分となるように設計しています。
順調に成長していくとして、仮に株に転換された後に3回20%分の株放出の増資をした場合は約半分にDilutionして持分は約5%になっているので、現在の市場環境だとIPOして時価総額が100億円くらいになるので5億円になるわけですが、元手が500万円なので100倍、すなわち100社に1社がIPOしてくれて、やっと元が取れるくらいの条件だったりします。
何とかこう言うことになるように努力するわけですが、例えばIPO後の市場価値がもっと大きくなるのであれば、この10%も変えていくことは出来るかなと思っていますが、現状だとこういう条件がいいかと思っています。

また、いくつか共同投資も始めていますが、例えば他に500万円を出してくれる人がいて合計1000万円の場合は、この合計金額が10%になるように条件を変えています。
資金が倍になるということは出来ることが2倍になる、あるいは期間が2倍になるということなので、成功までの確率がさっきの例で50社に1社くらいにはなるだろうという考えです。

ちょっと、最後が手前味噌な説明になってしまいましたが、500万円で10%分の創業ファイナンスであればまあ悪くない条件だと思っています(笑)
(ちなみにですが、Scholarshipとして資金提供したスタートアップに対しては次のステージまではかなりハンズオンに近く関与して、各種ワークショップでまとめてレベルアップさせるようなイベントなどもやってたりします。)
いずれにせよ、資本政策は後戻りが出来ないものなので、創業初期については慎重に進めてくださいね!


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